町屋の表情
公開日 2014年11月23日
更新日 2021年03月22日
約1.8キロメートルに及ぶ関宿の町並みには、約400戸余りの町屋が表通りに軒を連ね、 この内の200棟余りが保存対象になっています。
関宿の町屋は、平入(ひらいり)で低い二階建ての構成を持つものが一般的です。 一部には平屋のものや妻入(つまいり)のものも見られます。前面は1階と2階の柱筋を そろえ、間に瓦葺や厚板葺の庇を設けます。この庇がならぶことで、町並みは整った 美しさを見せています。前面の意匠は、1階はすりあげ戸が普通でしたが、 出格子窓が付けられていたり、格子戸を付ける例が多くなっています。 一方2階は、木部をあらわした真壁(しんかべ)のものと、 漆喰で塗籠(ぬりご)めた大壁(おおかべ)のものが併存しています。
このような町屋の建築年代は、最も古いもので18世紀中頃と見られ、明治中頃までの時期のものが多くあります。また、明治後期から大正・昭和期にかけての町屋には、二階が発展して建ちの高いものもあります。
細部の意匠を見ると、庇下の幕板、軒の持ち送り繰り型、二階外壁面の窓額縁や漆喰細工、起り屋根、格子、建具など、細部の意匠に工夫されたものが多くあります。このような外観や細部の意匠の多様性は、不特定多数の人々が行き交う宿場町の町屋にふさわしいものと言えます。
大壁の例
[服部家 18世紀中期 現状立面図]
二階前面が漆喰で塗籠められ、同様に漆喰で塗籠めた竪格子窓である虫籠窓がついています。 虫籠窓の意匠にも様々な物があります。屋根の軒裏も漆喰で塗籠められており、 軒の出は浅くなっています。 こうした漆喰の塗籠めは、土蔵のような防火的な効果を期待したものですが、 同時にその工事の難しさからその家の経済力を示すものでもあります。
真壁の例
[宮崎家 19世紀中期 復原立面図]
梁を前面に突き出して桁を支え、二階の屋根の軒の出が深くなっています。全面に細格子がはめられたも のや、手摺などが付いて開放的になっているものなどがあります。格子や手摺りの組み方に は特に様々な工夫があり、町並みに華やかさを加えています。
特色のある細部意匠
関宿の町屋に施された漆喰彫刻や瓦には、その家の子孫繁栄や家運長久を願って作られた様々な細工を 見ることができます。これらには、関宿の町屋建設にかかわった職人達の技がこめられているのです。
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