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意見書・決議(令和4年9月)

公開日 2022年09月27日

意見書
件名  義務教育費国庫負担制度の充実を求める意見書
本文

 義務教育費国庫負担制度は、憲法の要請に基づく義務教育の根幹である
「無償制」、「教育の機会均等」を保障し、「教育水準の維持向上」を図るため、国が責任をもって必要な財源を措置するとの趣旨で確立された制度です。
 教育の全国水準と機会均等を確保する義務教育の基盤をつくるためには、教職員の確保、適正配置、資質向上及び教育環境整備等諸条件の水準を保障すべきであり、そのために必要な財源を安定的に確保することが不可欠です。
 かつては対象であった教材費等は、1985年に対象外とされ、現在も地方財政措置による一般財源としての措置となっています。義務教育の水準が各自治体の財政力に左右されることなく安定的に確保されるためには、一般財源ではなく、国庫負担金による財源確保の対象の拡大、更にはその増額が極めて重要と考えるところです。
 学校現場では、教育のICT化が急速に進められ、多くの自治体で一人一台端末が整備されたものの、ソフトの導入や周辺環境の整備に対する地方財政措置は、一部に限られており十分ではない状況です。より適した学習用教材の活用や周辺機器の充実、システムの更新など、教育環境の水準の維持向上に当たって自治体間格差を生じさせないようにするためにも、地方財政措置ではなく、国庫負担による財源の確保が必要です。事実として、端末の修繕費や家庭等での通信費、その他の保守に関する経費等の公的負担・私費負担の状況には、自治体間の格差が生じてきています。さらに、2021年8月改正の学校教育法施行規則に新たに定められた情報通信技術支援員、特別支援教育支援員、教員業務支援員、あるいは学校図書館法に定められている学校司書についても地方財政措置はあるものの各自治体の一般財源となる措置であることから、結果として自治体間格差が生じ、教育水準と機会の均等が図られているとは言えない状況となっています。
 未来を担う子どもたちの「豊かな学び」を保障することは、社会の基盤づくりにとって極めて重要なことです。義務教育については、国が責任を果たすとの理念に立ち、教育に地域間格差が生じないよう、必要な財源を確保する義務教育費国庫負担制度の存続はもとより、措置の対象の拡充を含めた制度の更なる充実が求められます。
 よって、政府におかれては、下記の事項を実現されますよう強く要望いたします。

 

 

 

 1.義務教育の根幹である「無償制」、「教育の機会均等」を保障し、「教育水準の維持向上」を図るため、国の責務として必要な財源が確保されるよう、義務教育費国庫負担制度の更なる充実を図ること。

 

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。

提出先 内閣総理大臣 財務大臣 総務大臣 文部科学大臣 衆議院議長 参議院議長
可決日 令和4年9月27日

 

意見書
件名  教職員定数改善計画の策定・実施と教育予算拡充を求める意見書
本文

 2021年4月、国の学級編制の標準が40年ぶりに改善され、小学校35人学級が段階的に実現することとなりました。しかし、2022年度の教職員定数については、基礎定数化に伴う教職員配置の見直し等により教職員の自然減を上回る定数の措置には至っておらず、学校現場の人的配置の充実を求める多くの声を反映したものにはなっていません。また、中学校の学級編制の標準や高等学校等の教職員定数の標準の改善については、現時点において示されていません。国際的な比較においても、日本の1クラス当たりの児童生徒数は、小学校27人、中学校32人とどちらも経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均的水準(小学校21人、中学校23人)に到底及んでいない状況であり、小学校のみの改善に留めることは合理的ではないと言わざるを得ません。教職員が心身ともにゆとりを持って子どもたちと向き合い、日々の教育活動を創り出していくことは、子どもたちの「豊かな学び」の保障につながる基盤となるものです。子どもたちが安全・安心に学べるようにするためにも、全ての校種における学級編制と教職員定数の標準を改善する新たな教職員定数改善計画の策定と実施が強く望まれます。
 一方で、財務省の財政制度等審議会は、OECD諸外国と比べ、教育費の私費負担が高額となっている現状についての妥当性を主張し、教職員定数の改善や教育費の公財政負担の拡充には否定的な意見を示しています。しかし、少子化の進む中、子育て世代のみにその私費負担分を集中させることは、更に少子化を進める悪循環を生む大きな要因になるとも考えられます。家庭の現実に目を向ければ、感染症の影響による収入減や感染対策に係る保護者の経費負担増など、厳しい状況は今なお続いており、さらに、教育のICT化に伴う機器の整備費や通信費等の新たな保護者負担も生じています。また、多くの学校が施設の老朽化という課題を抱えている中、プールをはじめとする大規模改修工事においては、国の支援が必要です。
 公財政として措置される教育予算を拡充し、教育条件整備を進めていくことが、山積する教育課題の解決へとつながり、そして、子どもたち一人一人の「豊かな学び」を保障することになると考えます。
 よって、政府におかれては、下記の事項を実現されますよう強く要望いたします。

 

 

 1.子どもたちの「豊かな学び」の保障に向け、教職員定数改善計画の策定・実施と教育予算の拡充を行うこと。

 

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。

提出先 内閣総理大臣 財務大臣 総務大臣 文部科学大臣 衆議院議長 参議院議長
可決日 令和4年9月27日

 

意見書
件名  防災対策の充実を求める意見書
本文

 2022年3月25日に文部科学省が示した「第3次学校安全の推進に関する計画」では、学校施設・設備の安全性確保のための整備として、老朽化対策の推進はもとより、対策の遅れている非構造部材の耐震化の推進や、近年、激甚化・頻発化する風水害対策も重要であるとされています。
 2021年4月現在で、三重県においては、公立小中学校の全体の23.3%に当たる115校の小中学校が、県の公表する津波浸水想定区域内に立地し、うち105校は避難所に指定されています。時間的に余裕をもって避難できる高台が周辺になく、津波に対する安全性が確保されない学校については、高台移転や高層化などの対策が求められています。国による津波対策のための不適格改築事業については、2015年に制度の拡充がなされたものの、補助要件である「津波防災地域づくりに関する法律」に基づく「津波防災推進計画」の策定は全国的にも進んでおらず、支援制度の活用が難しい状況です。補助要件の緩和、補助対象の拡大等支援制度の更なる拡充を求めます。
 新型コロナウイルス感染症拡大の状況においても、災害時には避難所は開設されています。国が示したガイドラインには、PPE(個人用防護具)の準備、スペースの適切な分離等が記載されていますが、それぞれの自治体において施設やスペース、資材、人材を十分に確保するためには国からの財政的支援の充実が不可欠です。
 災害や感染症は、いつ発生するか分かりません。性やプライバシーに関する課題への対応、また、外国人、介助・介護が必要な高齢者、障がい者、女性、乳幼児への配慮など、まだまだ改善すべき課題は山積しています。国の責任において、安心して被災者が避難できるように備えるべきです。過去の災害に学び、最善の備えを整えていくという考えのもと、防災に関わる施策が更に充実されることを強く望むところです。
 よって、政府におかれては、下記の事項を実現されますよう強く要望いたします。

 

 1.子どもたちの安全・安心を確保するため、巨大地震等の災害を想定した防災対策の充実を図ること。

 

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。

提出先 内閣総理大臣 財務大臣 総務大臣 文部科学大臣 衆議院議長 参議院議長
可決日 令和4年9月27日

 

意見書
件名  子どもの貧困対策の推進と就学・修学支援に関わる制度の拡充を求める意見書
本文

 三重県では、現在、「第二期三重県子どもの貧困対策計画」に基づき、取組が進められています。そして、その基本理念には、「生まれ育った家庭の経済状況にかかわらず、三重の子どもが、必要に応じた教育支援、生活支援、親への就労支援等によって、夢と希望を持って健やかに成長できる環境整備が図られている状況をめざす」と示されています。支援を必要とする子どもたちに対して、相談体制などを充実させる取組や、学校だけでは解決が困難な事案について関係機関と連携した支援を行うなどの取組が今以上に進められていく必要があり、貧困の連鎖を断ち切るための教育に関わる公的な支援が極めて重要であり、就学・修学保障制度の更なる拡充が必要と考えます。
 高等学校等就学支援金制度においては、標準的な修業年限を超過した場合、就学支援金の対象外となることや履修単位数によって授業料を定めている場合に支給上限が設定されていることなど改善すべき課題があります。また、高校生就学給付金制度における第一子と第二子以降に対する給付額の差の解消や専攻科生徒への修学支援制度における国庫負担の割合の引上げについて、国の責任において更に進めていくことが求められます。
 一方、大学生等を対象とした「高等教育の修学支援新制度(授業料等減免・給付型奨学金)」として、6,211億円(前年度比371億円増)の国予算が確保されました。予算額の充実は見られるものの、「個人要件」や「機関要件」の設定などの適用要件の緩和や返還猶予制度の更なる充実が求められます。
 また、文部科学省の調査(2022年6月公表)によると、2021年度の大学等の中途退学者・休学者における新型コロナウイルス感染症を理由とする学生等の割合は、2020年度に比べそれぞれ増加しており、子どもたちの将来への進路選択にも影響を及ぼしています。2021年度、国は「学生支援緊急給付金」を創設し、大学等での「学びの継続」のための学生等への支援を進めましたが、2022年度における事業の継続は示されていません。経済格差を教育格差に結びつけないために制度・施策のより一層の充実が求められます。
 よって、政府におかれては、下記の事項を実現されますよう強く要望いたします。

 

 

 1.全ての子どもたちの学ぶ機会を保障するため、子どもの貧困対策の推進と就学・修学支援に関わる制度を拡充すること。

 

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
提出先 内閣総理大臣 財務大臣 総務大臣 文部科学大臣 衆議院議長 参議院議長
可決日 令和4年9月27日